編集業務の負担軽減に向けて、バージョンアップを重ねるAI校正に期待
株式会社アルファベータブックス 代表取締役
春日 俊一 様
(ご利用プラン:プレミアム+Plus)
自らのnoteを「飯田橋の小さな出版社の社長です。」と称する春日俊一様は、総勢2名の出版社で、編集・営業などのあらゆる業務に奔走している経営者。1冊の本を世に送り出すのに校正は不可欠なプロセスだが、出版不況の状況下では外部への委託も難しく、自社で作業をしている。業務効率化のために「Typoless」を導入した経緯や、今後への期待を春日様に語っていただいた。
- ボタン1つで校正でき、結果は1画面で見やすい
- AIの基盤モデルもアップデートして、日々進化
- PDFは50,000文字まで校正可能(+Plusプラン限定)
2人だけの出版社、校正業務の効率化が急務
株式会社アルファベータブックス 代表取締役 春日 俊一 様
アルファベータブックスは2024年10月に創業10年を迎えました。私が「Typoless」を知って使い始めたのは、くしくもこの時期です。当社は「芸術、文化の普遍的な創造性を書物に託し、読者に伝える」を社是に、前身の会社が得意としていたクラシック音楽や映画評論をはじめ、現代音楽や現代美術、歴史、文芸などのジャンルにも挑戦してきました。鉄道関連書はもう一つの柱に成長しており、マニア心をくすぐる本を得意とする出版社だと自負しています。
刊行のペースは年間で20点前後。最近では、80年代の日本のロック・アーティストたちの、当時の音楽活動の真の姿に迫った『検証・80年代日本のロック』が好評で、書評が各紙に載りました。この本や、過去に廃業した出版社から出ていたものを増補新版として復刊した『【増補新版】中山晋平伝 近代日本流行歌の父』などの校正の補助に「Typoless」を使用しています。
2人しかいない会社ですので、私も経営から編集、営業管理や宣伝・販促、在庫管理、出荷指示まで何でもやっています。校正に関しても、大手のように外部に任せるのは予算的に厳しく、担当するのは私ともう1人の社員です。
一度に校正するのは、1冊当たり数百ページとかなりの量になります。どうしても時間は限られていますし、1日ずっと校正だけをしているわけにもいきません。ソフトウェアを使って校正を効率化し、せめて単純な誤植ぐらいは自動的に見つけて減らしたいという思いがありました。
そこで、「Typoless」と同じような校正サービスを1年以上使っていました。ただ、校正の拾える精度は、私の求めているレベルには達していませんでした。オフィスソフトの校正機能に比べると精度が数十%ほど増したものの、一番見つけてほしい誤字脱字や言い回しの間違いは、1~2割ぐらいしか拾えていないという感覚でした。逆に、出版の世界では必要ないような余計な指摘が多く、使いづらさを感じていました。
サービスの利用を続けるかどうか考えていたところに、「Typoless」のデモを見る機会がありました。担当者の話を聞いて気になったのは、新聞社の長年の校正・校閲の蓄積が活用されているということ。出版に携わってきた人間から見て、新聞社の校閲部は毎日何回も締め切りがあって、非常に高いレベルで仕事をしているという認識があります。その会社が作った校正ツールなら良いものだろうという期待感があり、以前のサービスから乗り換えることにしました。
一番大事なのは校正の精度。サブスクならではの改善を実感
「Typoless」を使ってみて良いとまず感じたのは、操作がシンプルで画面も見やすい点です。複雑な操作や余計なボタンがないというのが、前の校正ソフトとの違い。校正ボタンを1度押せば、1つの画面で指摘の内容をほぼ全て見ることができるので、非常に使い勝手が良いです。今後バージョンアップを重ねていっても、見やすさや操作性の良さは変えないでほしいと思っています。
校正サービスにとって一番大事なのは、校正の精度の高さ。いろいろな機能を加えるよりも、根本である校正の精度を向上させることがもっとも重要です。
なぜサービスを利用するのかというそもそもの目的は、人間が見落としてしまう誤りを機械で瞬時に見つけてもらうことです。人間の目による校正では、驚くようなところで見落としが起こります。たとえば「ジャズ」を「ジャス」と間違えるわけがないという深層心理が働くのか、単純なミスなのに校正を何回しても見逃すことがあります。さらに、人間はだんだん目が痛くなるなど、疲労によって校正の精度も落ちていきます。
その意味では、導入した当初は、期待していたほどの精度には達していませんでした。人間の目で見落とすケアレスミスをいくつか拾ってくれるものの、拾いきれていない誤りも多く、作業時間を大幅に短縮するようなレベルには至っていないと思っていました。
しかし、4月のバージョンアップを経てあらためて「Typoless」を使ってみて、以前よりも精度がかなり良くなっていると感じました。AIの基盤モデルを大幅に改善したと聞きましたが、無駄だと思う指摘が明らかに減っていて、それだけでも効率化につながります。
※Typolessは、2025年4月にAI校正エンジンのモデルアップデートを実施。これにより、AIの指摘の正確性が大幅に向上し、前モデルに比べて誤検知が65%減りました。また、文脈により適した誤変換の検知や言い換えの提案が可能になり、企業名や製品名などの固有名詞のタイポ(誤植)の検知や冗長な表現の指摘も可能になりました。
出版業界には、専門書ならではの用語や表現があったり、著者それぞれのクセがあったりして、一般的な校正とは難しさの質が異なるのは確かです。それでも、近年のAI技術の進化を見ていると、いつかは「Typoless」も出版のプロが求める校正をしてくれるのではないだろうかという期待感があります。
使っているうちにどんどん良くなっていくのが、サブスクのメリット。精度にもまだ伸びしろを感じており、今後の進化に期待しながら「Typoless」を使い続けています。
プロが求めるレベルの有効な提案を期待したい
私が「Typoless」を使うのは、新刊の本を校正する時期に集中します。他の業務やプライベートで使用したことはなく、月によってはほとんど画面を開かないこともあります。日常的に活用されているユーザーの方々に比べると、もったいない使い方かもしれません。しかし、業務のスピードアップのためだと考えると、性能が良いものであれば多少の出費は許容範囲だと考えています。
実際の校正作業には、DTPソフトで原稿をレイアウトし、その組み版をPDFデータにして使います。文章を「Typoless」にかけて、指摘された内容を採用して修正するかどうかを判断し、PDFを見開きごとにプリントアウトした校正紙に手書きで修正を入れていきます。昔ながらのアナログな“赤入れ”ではありますが、著者の方や画面で修正するデザイナーに情報として伝えるためには、現時点ではより読みやすく正確な方法です。
とはいえ、現在の作業は煩雑になってしまっているという認識もありました。さらに効率化を図っていくためにも、これからはPDF校正をもっと上手に活用していきたいと考えています。
ご活用ポイント
「PDF校正」 ……PDFにある文字情報を50,000文字まで校正可能です。「Typoless」にPDFファイルをアップロードすると、指摘ごとにその位置がハイライト表示され、チェックできます。
※プレミアム+Plusプラン、ならびにエンタープライズ+Plusプラン契約限定の機能
将来的に「Typoless」に期待するのは、もちろん校正精度のさらなる向上です。一般的な指摘だけではなく、出版業界のようなプロ向けに有効な提案をするレベルまで進化してくれれば、効率化を目指すうえで非常に助かります。
また、歴史上の年代や人名などが合っているかどうかのファクトチェック機能にも、期待しています。そういった事実関係を自分たちで調べるのは非常に手間がかかり、それこそ朝日新聞社の持つ膨大な記事の蓄積を活用すれば、実現できない話ではないと思っています。
(掲載内容は2025年4月時点の情報です)